「んじゃ、行ってくる」
 先に玄関を出た兄に引き続いて、玄関で革靴を履く。外からはおはよう将臣くん、と挨拶をする幼なじみの声が聞こえてきた。
 靴べらをフックにかけながら、忘れ物はないかと記憶を反芻する。
 今日の授業の内容と鞄に詰めたものの一致を確認し、そういえばハンカチは入れたかと、制服の上からポケットを叩いた。
「……ん?」
 手の平に、ごろり、と硬質の感触が伝わった。ハンカチではありえないそれに、ポケットをまさぐる。
「これ、は……」
 長いこと忘れていた記憶が、一気に引きずり出される。あの夜渡され、翌日には形見となってしまった――祖母の大事な宝物。
 大切なものだからと、押し入れの奥に大事にしまっておいたはずなのだが。
「どうして、こんなところに」
 思わず疑問を口にするが、誰が答えてくれるでもない。
 さらに見間違いかとよく見たが、記憶の中のそれと手の中の物体に差異は感じられなかった。
「譲くーん! そろそろ出ないと、遅刻しちゃうよ?」
「あ、はい今行きます!」
 自分を呼ぶ声に我に返って、とりあえず白い石はポケットに戻した。
 余計なものは学校へ持ち込むべきではないのだろうが、かといって玄関に置いていくのも憚られる。部屋に戻って押し入れの中に戻すのが一番いいのだが、あいにくそんな時間はない。
 何気なく、ぽん、ともう一度ポケットを叩く。白い玉の感触は確かにそこにあった。
「……」
 玄関を開けようとノブをひねりながら、一度だけ、後ろを振り返った。
 階段から一番近くにある部屋。襖に閉ざされた室内は、今は家族の服が詰まった箪笥が並べられているだけだ。

(――行ってきます、ばあちゃん)

 心の中でそう呟いて、玄関を押し開ける。
 その先にある、何より大切な存在を、守るために。







 ゆずゆ(ネタ名称ですいません)の病的なまでの望美たん執着は祖母スミレさんからの刷り込みがはじまりだったんと違うんかとか妄想した結果、こんな過去捏造をだらだらやらかしていました(ああ痛々しい)

 まあ洗脳とまではいかんくとも、あのストーカー気質のきっかけ程度にはなったんじゃないのかとか。
 望美たんが神子だと見抜いてたなら、ゆずゆに一族の力が発現することも気づいてたんと違うかとかいろいろむがむぐ。

 つーかイベント見直してみたらゆずゆは兄貴に向かって「お祖母さま」とか言ってたよえええ!?
 い、いくらゆずゆが礼儀正しくても家族間でそんな呼び方ってどうなの!?(笑)
 というわけで幼少期はせめて幼児言葉的に「ばあちゃん」とか呼んでて欲しいなあとかとか(蝶夢みがち)



 ……まあそんな感じで、随分前(ゆずゆプレイした直後)に捏造して書き殴って一人で満足して、遥か3ブームが下火になった頃にこっそり出せばいいやと思ってたら十六夜記が出るとか情報出てきて、うわちっとも下火にならないよむしろ今のうちに出しておかないと出すタイミング見失う!とか思って半ばヤケ気味に出してみました。
 ひ、引かれてないと、いいなあ……(無理だ)

 追記:種の正解は撫子の花でしたが直す気力もなく放置していてすいません(こら)

(2005/08/29 up)

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