2008-05-19 世界はどうしてこんなにもムッツリに優しくできているのだろう(えー)
_ [ネタ文] ぬこ☆ぬこ☆迷走曲(ロアルカ)
むしゃくしゃしてやった。というわけで猫ルカさんその2。クロアがやたらめったら壊れまくってるのは仕様です。
「う……」 寝苦しさというか息苦しさというかのし掛かる重さに耐えかねて、淀んだ意識を強引に跳ね上げた。 意識が現実へと還り――夢から覚めてもなお続く重みの原因に目をやる。 「……って」 仰向けに寝ていた自分の胸の上に何かが乗っていた。 大雑把に形容するならば、丸くて黒くて温かい毛の塊、のようなもの。 己の顔と、長めの尻尾を巻き込むようにして体を丸めているそれは、紛れもなく猫だ。それも、中身――というかむしろ正体?――は何故かルカであったりする猫だ。 ルカが何故猫なんだという経緯については各人の想像に委ねさせていただきたい。 まあ簡潔に言うならば、先日は猫人間っぽいものになっていたルカが、今回は何をどう間違ったのか完全な猫になってしまっていてやはりそのうち元に戻るから以下略とかそんな調子だ。察してくれ。 俺はもっと寡黙でありながら常識的なツッコミを入れることを忘れない作品の良心みたいな存在だった気がするんだが、いつからこんなカオスな展開すらも受け入れるようになってしまったんだろうな……やはりアレか、隔週頒布の公式同人誌的なポータルサイトと見せかけた公式サーバに置かれた中の人が管理人の一ファンサイトみたいな何かの影響だろうか。そも同人だろうとファンサイトだろうと公式が発信した時点でそれは正史になりかねない近似値的なものではないんだろうか……とか段々自分でも何を言ってるのかわからなくなってきたな。 とにかく、現状ルカは猫になってしまっていて、例によって二人(いや、正確には一人と一匹か)で軟禁生活真っ最中というわけだ。 今回は完全に猫になっているので事情を知らない者に見られても平気なのだが、前回よりも猫本能に忠実すぎるルカ猫が脱走でもして一般人に拾われたりしたら――という危惧に基づいての軟禁である。 一応、猫用のおもちゃが大量に導入されたおかげでルカ猫は室内暮らしに満足しているらしく、今のところ脱走する気配はない。このまま何事もなく、できれば明日にでも元に戻ってもらいたいところだ。 (……しかし、どうしたものかな) 胸の上に居座っているルカ猫は規則的に脇腹の辺りを上下させていて、ぐっすりと眠り込んでいることは明白だ。 移動させようにも触っただけで起こしてしまいそうだし、こうも気持ちよく眠っているのを邪魔するのは気が引ける。 しかしこのままでは息苦しくてこっちが眠れない。夜のうちにしっかりと睡眠を取っておかないと、昼間やたらと元気いっぱいのルカの相手が務まらないのだ。 おまけに、ルカの相手をせず昼寝でもしようものなら、頭の回りをうろうろされつつにゃーにゃー鳴きまくったり、猫パンチ(時々爪出しっぱなし)を繰り出してきたり、ざらざらした舌で舐めまくられたりとまともに寝かせてもらえなかったりするわけで。 (……ごめん、ルカ) そろそろと手を伸ばして、ルカを抱き上げた。 案の定、ルカの目が眠そうに開く。暗闇で光る両目がこちらを見た。 「起こしてごめんな」 もぞもぞと体をよじり始めるルカを枕元に下ろして、毛布を持ち上げた。 「ルカ、こっち」 自分の隣をぽんぽん、と叩く。寝相は悪くない方なので、隣に寝ているのを寝返りで潰してしまうことはないはずだ。 ルカはしばらく毛布の中を眺めていたが、やがてその毛布の上へと飛び乗った。 「こら、ルカっ」 ルカは横向きのこちらの体へ登ろうとしている。どうやら先程の胸の上が気に入ったらしい。 「頼むから、それはよしてくれ」 再びルカを抱き上げて、今度は毛布の中で手を離した。 そして、出て行こうとするルカの頭を押さえつけるようにして、何度も撫でる。ついでに喉元も撫で回すのも忘れない。 「ほら、こっちの方があったかいし。な?」 ごろごろと喉を鳴らしながら、ルカはしばらく毛布から出ようとしていたが、やがて諦めたのかその場に足を崩した。 ……顔は少し不機嫌そうだ。 「よし、いい子だ」 さらに頭を撫でつけてやると、頭を伏せ始めたので喉を撫でるのを止めた。 指先に触れる毛並みは心地良く、このままずっと撫でていたい気分になる。が、ルカの目がそっと閉じられたので、一分ほど続けてから打ち切った。 「……」 ルカは眠ってしまったようだ。 (……俺も寝直そう) あまり衝撃が伝わらないよう体の位置を調整しつつ――指先だけで、そっとルカの頭に触れる。 ぴくぴく、と耳が動いたがそれっきり、ルカは無反応だった。 (これなら……平気、かな) 体を僅かに起こし、ゆっくりとルカの上に覆い被さる。 左足の上へ顎を乗せて寝に入っているルカの頭に、軽く唇を触れさせ、素早く離れる。 「……おやすみ、ルカ」 ルカが目覚めないことを確認してから小さく呟くと、こちらも改めて体を横たえた。
*****
――これは夢に違いない。
そう思っていた時期が俺にもありましたというか今まさにその最中だ。いや本当できることならどうか夢であって欲しい。 だが距離にして十cm強の眼前で穏やかにすうすう呼吸しているのはどう見ても人型をした女性で、あまつさえその顔は幼馴染みの少女に酷似していた、っていうかそのものにも程があった。 つまるところルカはめでたく元に戻ってくれたということなんだが――とりあえず主人公だけど空気にも為れる口数の少なさが醸し出すクールさがウリ(だったはず)の俺が、半ば現実逃避気味に混乱中なことはわかってもらえたと思う。 別に、異性の幼馴染みとの同衾に心ときめかせているわけじゃない。 そんなものは幼少の頃から幾度となく繰り返されてきたことだし、まあ今となってはさすがに何もせず健やかに眠りこけるにはそれなりに努力と忍耐を必要としないでもないが、まあとにかくそう取り立てて騒ぐものでもない。 では何に騒ぐ――というか騒ごうにも騒げなくなっているかというと。 「……」 ルカは肌色をしていた。 いや肌の色が白っぽい黒っぽいとかいうレベルでなく、いつも着ている鮮やかな色彩も、寝巻き時の質素な色合いも存在せず、ただただ肌色しかなかった。 (まあ、当然といえば当然の帰結ではあるんだが……) 完全な猫と化したルカを軟禁状態に置いた理由も、そこに起因している。 まあつまり。 猫は服を着ないし、それは猫になっていたルカも同様ということに他ならず。 「……」 シーツと腕の隙間からちらりと赤みがかったというかピンクっぽい何かが見えそうで見えない。 おかげでさっきから、相手が目を覚まさないのをいいことに一点集中型熱視線を送らざるを得なくなっていることは理解してもらいたい。 これは不可抗力だ。毎度毎度枯れてると言われ続けている俺にだって、それなりに不健全な思考も欲望も存在してるんだと、今ならば胸を張って言えそうだ。……声を大にして言うことでは断じてないが。 「……ん」 内心、ぎくりと心臓が跳ねる中――胡桃色の大きな瞳がゆっくりと開かれた。 ルカはどこかぼんやりとした風にこちらを見ていて、己の状態には一切気付いていないんだろう。 目を覚ます前にベッドから出ておくべきだった、という遅すぎる後悔。 どうすればこの場を出来る限り穏やかに乗り切ることができるのか、というこの後の一挙手一投足。 その二つをぐるぐると脳裏に巡らせていると、 「にゃー」 満面の笑みを浮かべたルカが、わりと棒読みっぽく鳴いた。 「……」 「にゃ?」 シーツに伏せていた頭を持ち上げたルカ(人間形態)に、軽く小首などを傾げられてしまった。ああいやそのルカ、もう少し……いや、起き上がらなくていい、惜しい気がするけど今はいい。 微妙に固まったままのこちらを不審がったのか、ルカがさらに体を起こそうとする。ので、慌てて口を開いた。 「る、ルカ、その……」 ルカは動きを止めてくれたが、きょとん、とした瞳が瞬きもせずこちらを凝視している。まだ猫の感覚が抜けてないということだろうか、これは。 「……おはよう」 視線に耐えきれず、とりあえず無難な言葉を返してみる。 するとルカの顔が再び笑みの形に変化して、 「にゃー、クロア大好きっ」 言い終えた瞬間、今度はルカの方が石化した。 「……」 「……」 「…………」 「……………………」 千里の道より長く、石より重い沈黙の後に。 「ばかー!!」 ルカは顔を真っ赤にして爆発した。
「その……本当にごめん、ルカ。とりあえず話をしよう、なっ?」 「やだっ絶対やだ!」 ドア越しに呼び掛けるも拒絶の一点張り。 爆発した勢いで部屋から追い出されてしまい、部屋に籠城中のルカはどこまでも頑なだった。 やがてクローシェ様たちがやってきてどうにか事態は収拾したが、ルカはしばらく俺と顔も合わせてくれなかったことは言うまでもない。
……全く。 完全廃棄されたはずの、先日の騒動の元になった薬(猫深化レベル1用、一回分)――何故か俺の手の中にあるそれを使う日は、そう遠くないのかもしれない。
----------------
むしゃくしゃしてヤマもオチもイミもない前半だけ書いてみたら、ネタ元の中の人が萌える後半の流れを言い出したのでさらに続けて書いてみた! そしたら妙にしょっぱくなってしまっ……(がくり) 正直すまんかった(土下座) 本当はラストに、
>(私が追い出したのにクロアにごめんとか言わせてでも顔あわせられないしああああ)って恥ずかしさと自己嫌悪で頭抱えているルカたん
がいたりしたんですが人称の関係で入らなかったこと、そして微妙なオチにすり替わってしまったことを深くお詫びいたします。
いやあ大変な萌えをありがとうございましたいいぞもっとや(以下略)
そこでねこねこを持ってくるお前のセンスに惚れる。<br>そろそろお年がばれるネタですよーゆかなかさーん、笑。
えっあれっ、ねこ言うたらねこねこ違うの?! 普通にそれしか出てこなかった私はどうしたら!<br>ていうかそんなツッコミしてくれるユーこそお年がバレかけていらしてよ!(そっと手を取り合いつつ)(笑)