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日々是ダメ人間/雑記

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2009-07-12 アークラプレイ中 この日を編集

_ [雑記] いつのまにか

色々とばたばたしてきたのでしばし潜伏生活→文章の書き方忘れたのでリハビリ、とかやってたら7月になってました。いやあどうりで暑いはずですよねうふふあはは! お久し振りですどうも。

そして戻ってくるなり更新があっちなのはまあそのアレだ、しあわせのためなら何だってするに決まってんだろJK(交換条件的な意味で)とかそんな感じなので察してください。いやほんとすいませんでした&ありがとうございました土下座。

_ [アルトネリコ] 遅くなりましたが自慢とお礼

潜伏してるうちにごまきちさんがキリリク絵をアップしてくださってた!!! 大変今更なのは百も承知ですが全力で自慢しようとおもいます。ごまきちさんお忙しい中色々面倒なリクですいませんでしたと土下座しつつ本当にありがとうございましたー!!


2009-07-18 うんまあ薄々そうじゃねえのとは思ってたけど公式サイト上(のファンサイト)ではっきり言われるとざっくり来るわあ この日を編集

_ [ゲーム] Starry☆Sky~in Spring~ コンプリート

全部遊佐のせいです。

……などと結論から述べてみましたがありのまま数週間前のことを述べるならば、遊佐のCDだけを(ネタ目的で)買いに行ったはずがいつのまにかスタスカ春夏まで手元に揃っていた。な……何を言ってるのかわかr(以下略)とかそんな感じでうっかり手に入れてしまったのでコンプしてみた次第ですサーセン。

一応スタスカとはなんぞやって話から始めると、Starry☆Sky、略してスタスカ。「星座彼氏シリーズ」と謳われる本作品のコンセプトは大雑把に言うと12星座の野郎キャラといちゃこらしようぜ(乙女ゲー的な意味で)というもの。リリース形態は「彼氏になるまで」を楽しむゲーム(+キャラによる星座解説CD)と、「彼氏になった後」を堪能するキャラ別ドラマCDの2種類。つまるところドラマCDはファンディスク的なポジションにあります。ちなみにゲームは12人のキャラを春夏秋冬に3名ずつ振り分けて全4本体制でのリリースです。

ドラマCDは1500円*1というシングルプライスながら1時間強もそのキャラが恋人的一人語り(というか語りかけ)をするという大変ボリューミーな仕様で微妙なお買い得感を煽りますが、一般的なゲームなら「一枚のファンディスクに12人分の内容が詰まって本編よりちょい安価格」であることを考えると、商魂逞しいというか上手い商売だなあと思わずにはいられません*2。ただ、お目当てのキャラだけをピンポイントで価格分楽しめるという点では非常にユーザーライクではありますね。

肝心のゲーム本編はというと、うんまあそのぶっちゃけた話、ゲーム本編はドラマCDを売るための釣り針であって大したことなかろとタカをくくってたら全然そんなことはなかったぜ!! いやなんか普通に、すっげー普通にちゃんとした話のゲームでマジビビった。中の人に色々喋らせておけばいいんだろってレベルの色々が適当で話の筋とか空中分解してそうな出来だとばかり思っててほんとすいませんでした土下座。

物語は異能力も異世界もなんもない普通の学園生活が描かれており、またゲームの目的が相手とくっつく事ゆえに、8割方が(キャラ立てのための)日常描写で占められています。よって事あるごとにキャラとフラグを立てて恋愛エンドに向かう乙女ゲーとは微妙に異なり、物語後半まではキャラ同士の友情物語が続き、ラスト一ヶ月ぐらいでようやくルート分岐してフラグ立てイベント、という趣向です。まあくっついた後は存分にドラマCDで楽しめってことなんでしょう。

プレイ期間は三ヶ月間(=サブタイトルにある季節の間)しかないものの、その短い中で語られる友情(+恋愛)物語は、方向性はベタながらしっかりした話作りとキャラ立て、そして中の人の熱演のおかげで普通に楽しめるゲームに仕上がっています。個人的には乙女ゲーというよりは往年のギャルゲの性別反転版という印象。公式曰く糖度が高めの春ですら、その他乙女ゲーと比べるとわりとあっさり目*3に感じましたし。

ドラマCDについては同メーカーがリリースしている旦那カタログシリーズ(色々な性格の夫キャラがシチュエーション毎に延々語りかけてくるCD)の恋人版という感じ。様々なシチュエーションにおいて中の人が一人語り……というか語りかけをしてきます*4。ちなみにドラマCDはそのキャラの誕生月に今年の1月から一枚ずつリリースされているため、ゲーム本編が出ていないのにゲーム後のCDが先に発売するキャラも多数です。ゲームやってないのにその後の内容聞いて大丈夫なのかと言えば、さして問題はないかなあという印象。終始恋人としていちゃこらしてるだけなので、聞いてるうちに「ああこういうキャラなのね」とわかってくるし、再生する前に公式サイトでキャラの(性格)設定を確認しておけばまず問題ないレベルかと。……で、とりあえずゲーム本編が未発売の遊佐を聞いたんですが、まあうんその何だ……とりあえずちゅぱ音*5が中の人自前なのはよくわかった。あの双子座眼鏡八方美人タイプだが中には踏み入らせないもう愛なんて信じない系の21歳教育実習生は人前自重。

以下は春版の各キャラ雑感的な何かを。ネタバレ含むので隠してみます。

土萌羊(緑川)

 緑川はまた忘れられた王子ポジか!(笑)
 ギャルゲ的に言うと空から降ってくるタイプのメインヒロイン(空気はあまり読まない系)です。
 とはいえ根は大変良い子なので中盤からはAKYっぷりを発揮、個別ルートでは往年のたいやきヒロイン的ないじらしさを見せてくれます。
 見所というか聞きどころは各所に挿入された緑川のおフランス語と、頑張って発声している幼少期声か(ぉ いや幼少期声は全員やってるので全員が聞きどころではあるんだけど(笑)
 しかしはらぺこキャラなのにこの爽やかさ、これがグリーンリバーライトの力か……!

東月錫也(小野D)

 なんというおかん。
 彼が何かやらかす度に「なにこのおかん!」と叫んでいた気がします。それぐらい何もかもがおかん。
 いわゆる毎朝起こしに来て弁当とか作ってくれるお隣さんちの幼馴染ヒロイン。いやま「いわゆる」も何もそのものすぎるから困る。
 ただそういった幼馴染ヒロインには得てして天然ぽやぽや属性が付与されていることが多いのに対し、小野Dのおかんは場の調和を第一とした全てを見守るゴッドマザー的おかんなので、その性格ゆえに自らの優先順位はどんどん後回しにしてしまう器用貧乏系の難儀な子でした。
 だがそれゆえに告白OK後のおかんの最強っぷりマジパネェ。まるで某NGの超絶ヘタレからドS攻めへと華麗な進化を遂げた敬ちゃんのようだ。
 そんな我らがおかんに幸せあれ……!

七海哉太(杉田)

 良くも悪くも子供な病弱ツンデレ幼馴染。デレ期間近の金髪釣り目ツインテ黒ニーソ的ヒロインに幼馴染属性と病弱設定を付与したものを性別反転させると彼になるとおもいます(ぉ
 小学生男子ツンデレ思考×病弱とかいう強烈な合わせ技であるがゆえに少々アクが強いキャラ……というかシナリオだったなあと。
 小野Dがおかん、緑川が迎えに来た王子と、他二人のルートにおける主人公は一貫して蝶よ花よと守られる流れに対し、こちらはどっちかいうと半主人公攻めというか、弱い二人で力を合わせて一人前みたいな流れというか。
 子供ツンデレ病弱、という設定をその通り形にしたキャラ立てっぷりは素晴らしいと思います。つーか基本的にスタスカはキャラの性格に(設定やシナリオ上での)ブレがないのが素敵すぎる*6
 つーかもうね、「病弱」という枷のせいでロマンチストとリアリストが混在し*7、前向きさを前面に押し出すことで常駐している諦念を見ないようにしている子でしたよもうダメじゃんこういう子はもっとちゃんとガッツリ引き上げてやらなきゃさあああ!!!(ばんばん)
 だが悲しいかな本シナリオでは、主人公が杉田と似たもの同士的なキャラとして描かれており、後半からは前半の杉田が乗り移ったかのような子供っぷりを披露してくれちゃったりするので、主人公の王子化を期待するとわりとしょんぼりします、っていうか大いにしょんぼりした!(笑)*8
 つうか杉田かわいそうすぎるだろ杉田。健気すぎてマジ泣ける。そりゃあ残りの二人もすっげー良い奴になって二人を祝福するわ!(笑)
 とはいえ、似たもの同士な幼馴染が不器用に手探りで気持ちを確かめていく、という流れは悪くはないし(つうかよくできてると思った)、危なっかしいけど微笑ましくもあるよね、というわけで期待は裏切られたけど良い話でした。
 うんほんとすいませんこういう諦念抱えたまま笑って相手を見送るのなんか無理だけどそうするしかない、とか自ら幸せ掴みたいけど掴めないから掴みに行けない子とかマジ弱いんだ!(笑) 別に病弱とか死にネタ的なお涙頂戴系に吊られてるわけじゃないんだ、ただこいつ(ら*9)の凝り固まった諦念抱えっぷりが見てられないだけなんだYO!!!

まあそんなわけで誰が気に入ったとかもはや言う必要がない気がしますが、一番ギニャー!となったのは杉田。でも一番幸せになって欲しいのはおかんです。おかん最強すぎるよおかん。

……えっとまあ何故か杉田のCDが手元にあったりする不思議なわけなんですが、いやこれは単に杉田のあのちゅぱ音は不器用さを出すための演出として本編中にのみ適用されたものなのかそれとも杉田の標準仕様なのかを確認したかっただけといいますかね!*10 ほ、本当にそれだけなんだからね! ネタ目的なんだからね!! あ、ざっと聞いてみた感じどうやら標準仕様っぽいですが、でも全編通して不器用で、という音監さんの指定というセンもあるよねっていう。……って今になって思ったけど大変どうでもいいことだなこれ!!(笑)

総評。ユーザーの琴線をばんばん弾きまくる豪華かつピンポイントな中の人布陣でそれっぽく作った関連商品売りまくってやんよ、という商魂逞しいシリーズかと思いきや、その中身は大変実直な王道路線の直球勝負作品。リリース形態はどう見ても分割商法です。本当に(以下略)、しかし各商品のクオリティとボリュームで価格のお手頃感を演出し、その上で外しのない中の人布陣で見事なユーザーホイホイを構築しているのは恐れ入った。実際ゲームは普通に面白いし価格分めいっぱい楽しめるし、気に入ったら個別CDに手を出してさらにハァハァしたらいいし、この「気に入ったら手を出してね」という誘い受けと見せかけた誘い攻めっぷり、嫌いじゃないぜ。乙女ユーザーの勘所をガッツリ抑えたhoneybee商法、こ、これからも喜んで釣られてやらなくもないんだからね!!

*1 税抜き

*2 まあゲーム本編の全4本体制もですけど

*3 質が、というよりは量的な意味で

*4 例えば「えっ、どうして笑うのかって? それは……」といった一人芝居状態で

*5 正しくはちっす音

*6 いやそれ当たり前のことなんですけどね! ほんともうガ○トちゃんのおかげで世界が鮮やかに見えすぎて困るよ!!

*7 ルート入ってみたら普通に誰よりも現実(及び主人公)を理解しすぎてて吹いた

*8 最初にノーマルエンド行きの選択肢で進めたせいも大いにあるんだけど……つーかあの蝶追い打ち対応はまさに外道レベル(えー)

*9 まあ誰とは言わないけど某ゆずゆとか(言ってる)

*10 遊佐だけでなくリョクセンコウも小野Dも「CHU」的な音声だったのに杉田だけ「んっ」なのはどういうことだって話


2009-07-20 ニコルかわいいよニコル この日を編集

_ [ネタ文] thrust program(ロアルカ)

ED後ロアルカ。宿題その3ぐらい。


「ふうん、それで?」  洒落たデザートグラスに盛られた大量の生クリーム――その正体は生クリームで過剰なトッピングを施されたプリン・ア・ラ・モードだ――から抜き取ったスプーンを口にくわえて、空猫はふんふんと頷いた。  客足が途絶えた店内の一角、ウェイトレスの制服のままテーブルに座る彼女の対面には、ちびちびとオレンジジュースを飲んでいる少女がいた。彼女の親友、ルカ・トゥルーリーワースである。  もはや恒例となりつつあるお悩み相談(という名の愚痴&惚気大会、当人にその自覚がないのが一番悩ましい)に、空猫は呆れながらも付き合っているのだった。 「……そんな感じで、全然普段と変わらないっていうか、私ばっかりオタオタしてただけっていうか……」 「なるほどねえ」  目に浮かぶようだわ、と口の中でもごもご呟いて、空猫はさらに生クリームをすくって口に運ぶ。 「まあ向こうとしてはそんな先輩が可愛くてしかたなかっただけだと思うんだけど」 「……もー、空猫はそればっかり。それは違うよ」 「どうして違うって言えるの?」 「だ、だって……それならもっとこう、……色々と……」  再びもじもじ口籠もってオレンジジュースをすすり始めた親友に、空猫はあからさまにため息をついてやった。  彼女の悩みとは、自分の方が一つ年上なのだからポジション的には姉のはずだとか、もっと自分を頼って甘えてくれてもいいのにとか――彼女なりの気遣いと願望が入り交じったところに生来のドジっ子属性が作用して化学変化が起こり明後日の方向へと暴走してはうまくいかないと嘆いている、まあ要するに自覚なき自業自得とでも言うべきものだ。 (そういうところがまた可愛いのよね、先輩は)  その悩みから要点、というか彼女の要望だけを抽出するならば、「彼氏よりも優位に立ちたい」、この一点に集約される。  空猫が思うに、二人――ルカとその彼氏――は火と油のような関係である。  彼氏は火であり、小さく静かに燃え続ける種火のようなもの。それを無造作に煽る油がルカだ。  油がどんなに頑張ったところで、火の勢いを弱めることはできない。それなのに、彼女は頑張ればどうにかなるはず――なって欲しい――そう根拠もなく信じて日々特攻しては玉砕している。少なくとも空猫の目にはそう見える。  無駄な努力だから諦めろと言うのは簡単なことだ。だがどんなに説得してもルカが納得しないであろうことは、親友である空猫にはよくわかっていた。  だったら、先輩が納得するまで応援するしかないわよね――というのが、友愛(時に逸脱気味)を極めた空猫の結論であった。 「わかったわ。先輩に新たな奥義を伝授する時が来たようね」  ゆらりと立ち上がった空猫の耳には、奥義って……と半ば引き気味に呟くルカの声は届かない(聞こえないフリとも言う)。 「さ、先輩も立って」 「う、うん」  言われるままにイスから立ち上がったルカを、テーブルから少し離れたところへ誘導する。  空猫は棒立ちになったルカの真後ろへ立つと、おもむろに一歩前へと踏み出し、ルカの背に覆い被さった。 「わっ、ちょっ」 「あっ動いちゃダメよ先輩、そのまま!」 「そ、そのままって言われても……」  重くはないが軽くもない、絶妙の力加減がルカの背を襲う。  ルカは言われたとおりその場に踏ん張りながら、居心地悪そうに視線をさ迷わせ、やがてぽそぽそと申し訳なさそうに主張した。 「あ、あの空猫、背中……」 「あら気付いてくれたのね」 「……気付かない方がおかしいよぅ……」  きらん、とかけてもいないエア眼鏡を輝かせ(るフリをし)ながら、空猫は自信たっぷりに言い放った。 「だがここであえて言わせてもらうわ、あててんのよ、と!」 「えぇっ!?」  背後にべったりと取り憑いた空猫の勢いに押されたのか、または本能的に何かを察知したのか、ルカが反射的に一歩前へと飛び出しかけ、それを押さえ込むように空猫が羽交い絞めにかかった。 「あん、もうダメじゃない先輩ったら動かないでって言ったでしょ?」 「だ、だって!!」 「別に取って食ったりはしないから安心してってば。で、これこそが奥義「あててんのよ」なんだけど――」  羽交い絞めにされた上に背中へボリューミーな胸を押し付けられ、ルカはじたじたともがいた。  そんな親友をそのままに、空猫は流暢に語り上げていく。 「つまり、こうして脈絡なく胸を押し付けることで相手の動揺を誘うのよ。ちなみに、これはさり気なく偶発的に起こったかのように行う方が効果が高いわ。何でだかわかる?」 「え? ええと……」 「ブブー、時間切れよ先輩!」  三秒と待たずに断言し、空猫はさらにぎゅうむと抱きついた。 「偶然の事故という役得感に浸っているところへ、さらにそれが意図的であったことを告げて倍率ドン! さらに倍! って寸法なのよ!」 「空猫、あまりよく意味がわからないんだけど……」 「だから、わざと胸を当ててるってことは誘ってるってことでしょ? こんなあからさまな誘われ方をして喜ばない男はいないと思うわ! 私ならイチコロね! とりあえず昇天状態に陥るわ!」 「空猫は男の人じゃないし、そんなことで昇天されても困るんだけど……」  親友が話を聞かないことはルカも心得ているので、それ以上はツッコまずに小さくため息をついた。 「空猫の言いたいことはなんとなくわかったけど、でも私には無理だよ」 「あらどうして?」 「……だって、私のじゃ足りないと思うし」  沈んだ視線の先には、ルカのささやかかつ緩やかな膨らみがある。  そんなルカの視界に、ちっちっちっ、と空猫の指が左右に振られた。 「甘い……甘いわ先輩! 特製まかないプリン・ア・ラ・モードよりも甘いわ!!」 「プリン・ア・ラ・モードっていうか単なる生クリーム丼だよね、あれ。太っちゃうよ? 本当に」 「しっかり働いた後はガッツリ甘いものを摂取しなくちゃ。とにかく、先輩? その考えは甘いわ」  後ろから抱きついたまま、器用にビシィ、と指をさす空猫から、ルカは微妙に顔の位置をずらした。 「いい? 女の胸というのはね、大きさに関係なく柔らかいものよ。あ、第二次性徴前の小さい子は除くけど」  半信半疑なルカの顔へさらに指を突きつけなおしながら(さらにルカは避けながら)、空猫の主張は続く。 「つまり、大きかろうと小さかろうと、背中にこうしてぴったりとくっついた時に柔らかさを感じたら、それは胸が押し当てられていると判別できる。ここまではいい?」 「う、うん……」  そんなの当たり前じゃない、という言葉を飲み込んで、ルカは渋々頷いた。 「でもね先輩。この奥義において重要なのはね、どれだけ柔らかいかとかそういうことじゃないの――」  勿体ぶって間を置いてから、空猫は高らかに宣言した。 「この奥義でもって相手が動揺する最大の要因は、意図的に胸をあててきているという事実でしかないの! そこに大きさなんて関係ないわ!!」  まるで歌い上げるような――しかし強引さは否めない――弁証に、ルカはすっかり呑まれてしまっていた。 「そ、そうなの……かなあ」 「そうよ先輩。いい? 「好きな相手から大胆に誘われている」っていう事実に男はよろめくものなのよ」  ルカの中で「そうなのかな」が「そうかも」「そうだよね」と三段活用を見せるまでに、それほど時間はかからなかった。

*****

 その日の夜、意気揚々とルカは目的の部屋を訪問した。  明日の会議で使う資料と持ち歌の譜面を持参し、不審がられることなく室内への潜入に成功。  相手には資料を渡し、自分は勧められたベッドに腰掛けて譜面を開く。  歌の練習を邪魔しないようにと、相手は何か話しかけることはせず、資料を読むことに集中し始めたようだった。 (……状況よし)  ルカはそっと上着のボタンを外して腕を引き抜き、座っていたベッドの上へと落とした。  奥義伝授時のアドバイスの一つ、少しでも柔らかさを伝えるための策である(ちなみに、ヒールのついた靴は疲れちゃったから脱いじゃえ、とベッドに座った時点で脱ぎ捨ててある)。  そうして静かに深呼吸を済ませ、心の準備も終えた。 (――これで完璧、だよね?)  そう判断して、ルカはベッドから立ち上がった。  そろそろと書類を読む背中に近づいていき、小さく喉を鳴らしてから――素早くしゃがみ込み、伸ばした腕を首に絡ませていく。 「――ルカ?」  どうしたんだ、の意味を込めた呼びかけには応じずに、ルカは無言のまま相手の背中にしなだれかかった。  意識して胸を前に突き出すようにして、ゆっくりと体重をかけていく。 「……ね、クロア」  吐息混じりに相手の名前を呼んで、耳元にそっと息を吹きかけるべくさらに体を前に倒す。 (こ、これなら……っ!)  大きくはないが全くないわけではない自身の胸が押し潰される感触に、ルカは僅かながら手応えのようなものを感じていた。
 ――いい? 相手に何が起こっているか理解させちゃダメよ。何がなんだかわからないうちに畳み込んで、自分のペースに巻き込むの!
 親友の言葉がルカの脳内を駆けめぐる。  できる限り色っぽくね、普段しないような仕草とか行動とかもいいと思うわ、ただ恥ずかしがったら効果半減だから絶対にダメよ、でもまあ恥じらう先輩もたまらないのは事実よっていうか元々可愛いから何してたって良いんだけど――結論だけが破綻したアドバイスを、ルカは必死に実行へ移していった。  擦り寄るように頭を寄せて、唇でそっと髪を掻き分けて相手の耳を露出させ、ふっと息を吹きかけつつ掠めるように唇の先だけを触れさせる。  もちろんその間、胸をぐっと前に押し出すことも忘れない。 (……もしかしなくても、効いてる?)  相手はさっきからルカの方を振り向くこともなく、ただ黙って俯いている。  実はルカがここまで好き勝手できたのも相手の視線がなかった事が大きく関係していたのだが、成功どころか大成功の兆しを掴んだルカはそのことに全く気付かない。 (よーしっ、このまま一気に畳み掛けて――)  さらに大胆に相手を誘うべく、まずは耳たぶでも甘噛みしちゃおうかな! とさらに相手へ体重をかけたところで、 「ふぇっ――」  相手の顔付近にあったルカの手首が、ぱしんと叩かれた。……ように、ルカには思えた。  実際には突然手首を掴まれただけなのだが、突然の出来事はそれだけでは終わらなかった。  掴まれた手首を支点にしてルカの体が前方へと引っ張られ――さらに体重をかけていた背中が一気に沈む。 「わあっ!?」  気が付けば、ルカは前屈状態の相手の背中にべったりと貼り付くような形になってしまっていた。  起き上がろうにも両の手首はしっかりと掴まれていて、ルカの力では引き抜けそうにない。  動かせる箇所といったら、強制的に床に着かされてしまった膝から下ぐらいだ。 「ちょっ、ちょっとクロアっ……」 「……」 「ね、ねえっ、あの……は、離してってばっ」  反応のない相手に、ルカはなけなしの力で上半身を起こそうと努力してみた。  しかし、じたじたと横に揺れるので精一杯。すぐに力尽き、べたりと背中に突っ伏すしかない。 「……」 「クロアっ」 「……」 「……あの、ちょっと手首とか痛いんだけどっ……」  あまり言いたくはなかったのだが痛みを訴えてみると、わりとあっさり手首は解放された。ルカは急いで起き上がり、相手からさりげなく距離を取ってからぺたんと床にへたりこんだ。  その数秒後、距離を取った意味などほとんどなかったことを知ることになる。 「それで、ルカ」  ルカが顔を上げたすぐそこに、さっきからずっと「見えていなかった」相手の顔があった。 「っ、な、何? クロア」 「さっきのは何だったんだ?」 「べ、別に何もないよっ?」  立ち上がる隙も与えられず、思わず後ずさる。僅かな距離は、にじり寄る相手にあっさりと詰められた。 「へえ」 「う、うん……あの、クロア何で近づいてくるの、かなー……」 「さあ、何でだろうな?」 「ちょっ、す、ストップ、ストップー!!」  とうとう耐えきれなくなったルカは顔の前に両手を広げ、それ以上の接近をガードにかかる。  それが白旗も同然の行為だと理解した相手は、素直にそこで動きを止めた。 「だっ、だからっ、そのぅ……」 「その?」 「……わざとあててみせて意表を突いてっ、クロアの余裕を無くさせたいなーって、思って……」  恥ずかしさと本能的なものから目を瞑っていたルカには、相手がそっと眼鏡の位置をずらしたことを気付けるはずもない。  相手が何の感想も反応も返さなかったことに動転し、ルカはさらにしなくていい言い訳を叫んだ。 「こっこれならクロアも驚くって思ったのにー!」 「……あー、うんそうだな」  だいぶ棒読みっぽい声で呟きつつ、相手は再び眼鏡の位置を直した。直すフリをした手で、勝手に緩んだ口元を隠すために。 「それで、続きは?」 「つづっ……!? な、ないからそんなのっ」 「俺を驚かせたいんじゃなかったのか?」 「そ、そうだけどっ……も、もうクロアのばかーっ!」


 そうして敗北感に塗れながら相手の部屋を後にしたルカが思ったことは、お決まりのコンプレックス丸出しのたった一つの推論。 (やっぱり大きさが足りなかったからダメだったんだ……)  後日、その誤解も甚だしい敗因を克服し、リベンジに挑むルカがいたりいなかったりしたのだが、それはまた別の話である。


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 元ネタの中の人にそのポルナレフ的な流れは一体どういうことなのかをkwskしたら後半部の要約を提示されたので、勝手に空猫さんで前半部を追加したら無駄に長くなってしまったでござるの巻。(大いなる萌えをありがとうございました土下座!!!)


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