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日々是ダメ人間/雑記

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2008-03-02 漫画版でカオスの功罪を、ドラマCDでサンホラの偉大さを知る

_ [ネタ文] unconscious attack(ロアルカ)

ED後ロアルカ。内容はありません。以上。


(……えー、と)  状況がまるで掴めなくて、数秒ほど思考が停止した。いやその逆で、思考が停止していたから状況が掴めていないのか。  ――ううん、そんなのはどっちだっていい。  頭の回転の鈍さを叱咤しつつ、まず記憶を遡る。何故こんな状況になっているのかを探るために。

「……たらね、ちょっとはにかむ感じの笑顔でね、ありがとう、ってー!!」 「ほんとに?!」 「うわー、いいなー!」 「でしょー。前はクールビューティーで通ってたクロアさんが、ありがとうって穏やかに言ってくれるだけでも凄いことなのに、そこにあの笑顔なんだもん。あれでときめかない女の子はいないよー」 「羨ましいー……私もそんな風に言われてみたーい」 「今や御子室付きの護衛だもん、私達と通常任務とかありえないし。ほんといいなー!」
 クローシェ様が部屋に置き忘れた資料を取りに行って、急いで廊下を走っていたとき。  騎士隊付きのレーヴァテイルたちの雑談が偶々耳に入ってきて。  いつもなら聞き流すところだけど、聞き捨てならない単語が混ざっていたせいで、思わず足を止めて柱の影に隠れたりして聞き耳を立てて。  ここのところ忙しくてクロアとろくに話もできてない私に対するあてつけかー! って手の中の書類を握りつぶしそうになったりして。  今や隊内だけでなく、あちこちのレーヴァテイルの間で、クロアが密かな人気を博しているって噂は本当だったんだって思ったりして。  そういえばI.P.D.の子たちの中に、クロアが来るとちょっと頬を染めたりぽーっとしたりしてる子がいたっけ、とか脳内メモにチェックを入れたりして。
 確か、夕方ぐらいには決めてた気がする。  疲れてるクロアの睡眠を邪魔してでも、クロアに会うって。  別に、モテモテなことを問い詰めようとかそんなつもりはなくって。  ただ……ただそう、クロアの恋人は私で、クロアは私に好きって言ってくれて、クロアの笑顔なんかその気になればいつだって見られるんだから私は! っていう主張と、それなのにもう一週間近くその笑顔すらまともに拝めてないのってどうなのよー! っていう不満。というか、不安。  その不安はあっという間に私の心を占拠した。明日の会議の資料を何度読み返してもうまく頭に入ってくれないくらいに。  このままじゃダメだって思った。  だって公務に差し支える。みんなに迷惑をかけてしまう。最近ようやく、会議の席でも自分だけ浮いてるって感じなくなってきたのに――最初の頃と比べれば、だけど。  だから、この不調の原因を早急に、何としてでも取り除かないといけない。  うん、だから――このままじゃクローシェ様にだって迷惑がかかっちゃうんだもん、貴重な睡眠時間を邪魔されたってクロアは許してくれるよね?  と、完璧な理論武装を固めた上で、今日やるべきことを全部片付け終えた夜半過ぎ、クロアの部屋のドアを特定のリズムでノックした。  仮にもう寝ていたとしても、起きるまで叩き続けるつもりだった。だって、このままじゃ私使い物にならない。役立たずになっちゃう。そしたらクロアに呆れられちゃうかも。ううん、こんなことで叩き起こすこと自体に呆れられるかも。あれっ、それって結局どっちにしても呆れられるってことじゃ。  追い詰められた頭がおかしな結論を出そうとしたところで、あっさりと扉は開いた。  どうしたルカ、って緊張した面持ちを見た途端、やりすぎた、って即座に後悔した。もちろんそんなの遅すぎる。  真っ直ぐに見下ろしてくる瞳の前に、罪悪感が物凄い勢いで襲ってきた。耐えきれずに俯いてしまった私は、ぼそぼそと目的を告げるしかなかった。 「その、クロアとお話したいなって、思って……ちょっとだけでも、いいから」  ぎゅっと握った自分の手を見ていたから、私のしょうのない我が侭を聞いたクロアがどんな顔をしたのかはわからない。  返事をするまで少しだけ間があったのは、呆れて声も出なかったってことかもしれなかった。  そうだよね、こんな夜中に、突然私がやってきたりしたら何事かって思うよね。蓋を開けてみたらただ話がしたかっただけなんて、クロアからしたらいい迷惑だよ。疲れてるのに、これから休もうってときに、恋人の我が侭に振り回されるなんて。  でもクロアは優しいから、そんな私の我が侭も受け入れるに違いなかった。疲れてる体を押してでも。  ――ああ、何で私自分のことしか考えられてないんだろう!  ちょっと考えればすぐわかることだったのに。私が使えなくなってるのは私が勝手に嫉妬みたいなことしてるせいで、クロアは何も悪くなくて、御子としての自覚が全然足りてない私のせいに他ならない。 「じゃあ、とりあえず中へ」  罪悪感を上回る不甲斐なさに押し潰されそうな私へ、予想通りクロアは優しい言葉をかけてくれた。  ここで、やっぱりいい、なんて言えるわけもなく、頷いた私は何日かぶりにその部屋へと足を踏み入れた。  ごめんなさいクロア、なんて心の中で謝りながら。

(――何で?)  思い出せた記憶はそこまでだった。そこから先が今の状況だったから。  ぱたんと閉まった扉の前で、何だかわりと全力で抱き竦められてる現状だったから。 (ていうか、そもそも私からこうしようって勢いで来たんじゃなかったっけ)  そうだ、慌ただしく夕食を食べているあたりには、クロアに会って話をするだけなんて生ぬるい、何の説明もなくぎゅーって抱きついたりしてやる、そんなことできるの恋人の私だけなんだから! ……とかなんとか、やたらに燃えてた気がする……。 (ええ、と……)  状況を把握してもまだ頭がうまく回らない。  私の体はすっぽりとクロアの腕の中に収められていて、身動ぎするのも難しい。できることといえば、力を抜いて体重を預けることぐらい。  いやでも、安易に流されるのはなんかよくない気がする。というか、負けって気がする。だいたいこうしたかったのは私であって、それを何でだか知らないけどクロアからされてて、とにかくそれは何となく違う気がする。  けど、他にどうすることもできないのも事実。 (……)  ほ、ほんのちょっとだけ。  頭だけをクロアの胸へ置くようにしてみた。頭だけ。それ以外の全身はまだ強張らせたままで。 (……う)  どうしよう。  ものすごく絆されてしまいたくなってきた。  だってクロア温かいし。クロアの匂いとかするし。ほっとするし。  胸の中にあったトゲトゲだったりモヤモヤしてたりするものが、しゅーって空気が抜けるみたいに薄まっていくのがわかっちゃったし。 (クロア……)  心の中で名前を呟いて、もうそれでアウト。  そのまま目を閉じて、全身を委ねるべくあちこちから力を抜いて、 「……え?」  勢いよくクロアが私の両肩を押した。当然、密着していた体は離れてしまう。 「ごめん」  おまけに謝ってきたりした。  そりゃ、夕飯を食べ終えて再び書類と格闘を始めたあたりには、もうこんな使えない子になっちゃうのはクロアのせい、もう謝るぐらいしたっていいぐらい! とか息巻いてた覚えもあるんだけど、そもそも謝罪されてる部分が違うというか。  ぎゅってしてもらったことで問題は解決気味。というより、謝罪付きというこっちの要求をパーフェクトに満たした状態だった。  でも、なんていうか、……納得がいかないっていうか、素直に受け入れ難いというか……。  そんなことを考えていたせいで難しい顔になっていた私に、クロアはさらに謝罪の言葉を連ねてきた。あれもしかして、私が怒ってるとか、そんな風に思われてる? (ち、違うのに……あー、もうっ)  半ば理不尽に私の要望だけが叶えられていること、しかもそこに私の狙った思惑が伴っていないこと――消えかかっていたはずの、昼間からさっきまでずっと燻っていた何かが、ぽっと再燃する。 「クロア、眼鏡貸して」 「え?」 「早くっ」 「あ、ああ」  クロアは外した眼鏡を折りたたんで差し出してくる。それを受け取って、片手の中にそっと握り込む。  それから、片方の手を口元にあててクロアちょっと、と囁くと、当たり前のようにクロアが頭を下げてきた。 (うんうん、狙い通り――)  ぎりぎりまで引きつけてから、握っていた眼鏡のつるを片方だけ開いて、服の隙間に突っ込む。そうして眼鏡をひっかけることで両手を自由に。  そのまま、クロアの頭――首根っこに腕を回して、目測を誤らないように寸前まで目を開けたまま、クロアの唇に自分のそれを押し付けた。 (や、やった……!)  クロア驚いてるよね、動かないし、うまく不意をつけたし、うんちょっとスカっとした!  ていうか、元々やろうと思ってたのはぎゅってするぐらいで、こんなちゅーとかはその、副産物的な感じであったりなかったりしてもいいかなって思ってた程度で、まさか自分からやろうとかそんなことは全く微塵も考えてなかったわけだけど、でもクロアから先にぎゅってされちゃったらもう後はこうするしかないっていうか!  そうだよ、昼間からずっと私ぐらぐら不安だったのに、クロアはそんなこともなく普通にお仕事してて、もちろん私も自分のやるべきことをこなそうと頑張ってて、でもうまくいかなくて――まあそれは自分が悪いんだけど、でも、私はこれだけ不安だったんだよってことを少しはクロアも思い知ったらいいかなって!  いやうん、この行為からそれが伝わるかと言われたら絶対伝わってない気はしてるけど、でも、今日は私がクロアに思い知らせたくて、クロアを驚かせてやりたいみたいな感じで来たんだから、いいことにする! (……って、ちょっ)  ぐい、と腰が引き寄せられる。  ほぼ同時に頭もがっしと固められたと思ったら、強引に閉じていた唇が割られた。 「っんぅ、んん、――っ!」  絡め取られて、内壁をなぞられて、吸い上げられたりして――何日ぶりかの行為に、体がじわじわと反応する。覚えさせられていたはずの、でもここのところ忘れかけていた様々な感覚が、徐々に思い出させられていく。  おかげで頭の中はあっという間に真っ白になって、何も考えられなくなった。ううん、考えてはいたけれど、考えた側から霧散して、なんの形もなさない。  息が苦しいなって思っても、もう指一本動かせなかった。与えられた刺激に、反射的な反応を返すだけで。  ようやく口を解放してもらえた時には、いつの間にか滲んでた涙でクロアの顔がよく見えなかった。  それでも、だんだんはっきりしてきた思考に従って、私はクロアを睨み付けてみた。 「……クロア、ずるい」  出てきた言葉は負け惜しみだった。  何がずるいんだ、なんて聞き返されたけど、そんなこと説明できそうにない。仮に説明してもクロアわかってくれなさそうだし。  だから、 「クロアのばか」  シンプルな文句を述べて、クロアが何か言い返してくる前に、今度こそ自分から先にクロアへ抱きついた。 (クロアがもう帰れとか休めとか言っても、離れてやらないんだから――)  それは、そうすることで、クロアの休息時間を奪ってやる、というささやかな仕返しのつもりだったのだけれど。
 どうしていつも、それが倍か倍々ぐらいになって自分に還ってくるっていうオチになるんだろう?  私がそれを理解するには、わりと長い年月が必要だったりするらしかった。


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 ドラマCDを聞いてついカッとなって以下略。いや中身はドラマCDと何ら関係ないけど! ていうか中身そのものがないけど!(いつものこと)  基本的に私の原動力は不満から来るものだって知ってた! わかってたそんなこと……!(血涙)
 ところでルカたんは反撃してるつもりでバイキルトとかスクルトとかをかけてる派だよね。確実に。


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