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日々是ダメ人間/雑記

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2008-03-16 そのときめきはしかと受け取ったあああ(ばんばん)(萌)(私信)

_ [アルトネリコ] 設定資料集届いた

とはいえまだ全部読み終わってないんですが。っていうかこれ普通に一日がかりだろ読破するの……。

でかっ! 厚っ! 重っ! 開封してまずそんな感想。鬼のようなボリュームでぼくらの疑問に答えてくれる! かと思ったらクロアについてはたった1ページこっきりですか! いやカオスの妄想を目一杯詰め込みましたって聞いたあたりから期待なんかしてなかったけど! 初期稿の絶対領域はあまりにも凶悪すぎだったけど!!

……や、OK兄弟、あたいは落ち着いてる。ていうかこれはつまりアレだろ? クロア(とルカ)の過去については大いに捏造しろっていう神の啓示ってやつだよな?! HAHAHAその懐の広さと心意気、しかと受け取ったぜベイベー!

えーと他にも色々言いたいことはあるんですがとりあえず、カードゲームは初回版特典という形にして、本体のみの通常版設定資料集を出してくれても良かったのにとか思ったのは私だけでいい。

_ [ネタ文] One's opening(ロアルカ)

というわけで早速捏造のお時間ですよ!(……) 5〜6歳あたりの幼少ロアルカっぽいもの。


 彼が最初に思ったことは、あれ?というどこか間の抜けた疑問だった。  心臓が早鐘のように鳴っている。全身は動かせばぎしぎしと音がしそうなぐらい強張っていた。何故か天井へ突き出すように伸ばしていた腕を戻そうと思うのだが、固まっていてうまくいかない。  さっきから聞こえている音が自分の呼吸音だと気付き、あちこちが妙にひやりとするなと思ったら、暑いわけでもないのに身体中にじっとりと汗をかいていたりする。  時間が経過するにつれ、自分の体が明らかに異常な状態らしいことは理解した。  だが、彼の目の前に広がる光景――彼に寝室としてあてがわれた納戸は、眠る前のものと何一つ変わっていない。静まりかえった室内は、自分以外の時間が止まってしまっているようにも感じられ、実はこれは夢なのではないかと思い始めた。 (……ゆめ、だ)  彼は唐突に全てを理解して、ようやく固まっていた腕をぱたりと下ろした。  自分がさっきまで見ていたらしい光景は、現実のものではなかったのだ。 (なんだ、っけ)  らしい、というのは、彼は既にその光景を思い出せなかったからだ。  自分のこの異常は、自分の見ていた夢によるものらしい。ならばどんな夢だったのか。  それを思い出そうとすればするほど、彼の朧気な記憶は自壊していった。そうして残ったのは、ただ「夢を見ていた」という端的な事実のみ。 (……さむい)  寝巻きに染み込んだ汗が彼から体温を奪っていく。べたべたして気持ちが悪いと思うのだが、彼は替えの着替えなど所持していない。  布団の中をごろりと転がり、冷たく張り付く寝巻きからどうにか逃れようとするのだが、もちろん肌寒さがなくなるわけがない。  やがて冷たさに慣れた頃には、彼の目はすっかりさえてしまっていた。 (ねむれない)  目を閉じても彼の意識は遠のかない。  どころか、眠ればまた先程の――どうしても思い出せないあの感覚を、再び味わうことになるのではないか。  その恐れにか、彼にはいつまで経っても眠りが訪れなかった。 (ねないと……いけないのに)  子供は夜は寝るものだ、と教えられ早寝早起きをしている彼にとって、夜に起きているということは罪悪でしかなかった。  ただそれは、遅くまで起きていると長く灯りを使わなければならないという、単なる節約術の一貫だったのだが、彼がそれを知るのはもう少し成長してからだ。 (どうしよう)  以前幼馴染みから教わった、動物の数を数えるという方法を試してはいるのだが、彼女の言うような効果は現れる気配もない。  むくりと半身を起こした彼は、とりあえずトイレに立つことにした。体が冷えたせいでもよおしたこともあったが、彼の中で、子供が夜に出歩いてもいい場所はそのぐらいだった。


 そんな彼が玄関の戸を音を立てないよう慎重に慎重を重ねて押し開いたのは、主に三つの理由からだった。  トイレに起きても家人は気が付かないのだから、トイレよりも二階から遠い位置にある玄関を開けてみても大丈夫ではないのか、という子供なりに必死に計算した考え。トイレに行ったら益々眠気がなくなってしまった事実。こんな夜遅くに見る星空はどうなっているのだろうという、ほんの少しの好奇心。 (……わあ)  少しひんやりした空気に一度体を震わせて、彼は広がる空を見上げた。  期待していたほど夜空は大きく様変わりしてはいなかったが、それでも彼は満足感を覚えて口元に笑みを浮かべた。  首が痛くなるまでそうしてから、辺りを見回し、そして出てきた扉を振り返る。お世辞にも立派な作りとは言えない、単なる木板にすぎないそれを注視する。  そのまま十秒ほど待って何も起きないことを確認してから、彼はそろりと一歩を踏み出した。  じゃり、という足音にぎくりと動きを止め、次の一歩をそうっと踏み下ろす。結局どうやっても音が鳴ってしまうことに気付いた頃には、彼は道の端まで来ていた。  見下ろす先には、リムの隙間から夜の闇よりも濃い真っ黒な雲海が広がっていた。落ちたら当然命はない。それは、ここに住む者にとってそれは常識以外の何物でもなく、そのため迂闊に近寄る者もいない。  だから、命の危険があるにも関わらず、ここには柵の一つも設置されていない。設置するほどの予算がないことも大きな理由ではあるのだが。  生まれた時からここに住んでいる彼も、その常識を身につけている一人だ。だから、こんな危険な真似をするのはほとんど初めてだった。仮に、少なからず人目がある昼間――子供が起きている時間帯――にこんなことをすれば、誰かがすっ飛んできてこっぴどく叱られるに違いない。少なくとも、物乞い同然で路上で暮らしている少年少女達がやるよりは、確実にお咎めを受ける。 (……)  どんなに目を凝らしても黒さしか見えてこない光景を、彼が退屈だと思うまでにそう時間はかからなかった。彼の本来の目的は地面の下ではなく、空の上にあるものだった。  ひとまず家の前まで戻って、もう一度首が痛くなるまで星を見たら部屋に戻ろう。  そう決めた彼はくるりと振り返り、 (……っ?!)  心臓が飛び出るぐらいに驚いた。思わず後ろに後ずさりかけて、ざり、という音で我に返る。同時に後ろにあるもの――存在していない地面――を思い出して、背中に冷たい汗が流れていく。  何度も目を瞬かせた彼は、だがそれ以外に身動きが取れずいにいた。  彼の視界に映るのは、数分前に彼が出てきた家の扉。  今はその前に、どうやら音を立てないよう戸を閉めているらしい、小さな人影がある。  それが誰であるか、彼は一目で看破した。というか、あの家から出てくる人間はあと二人しかいないし、そのうちの一人は大人だ。あんな小さな体ではない。  だがその名前を呼ぶことは憚られた。声を出したら彼女に気付かれて、ひいてはその母親にも、悪いことをしていたのがバレてしまう。  そうして硬直する彼をよそに、扉を閉め終えたらしい彼女がどこかうきうきと振り返って、 「っ?!」  驚きに体を震わせてから、先程彼がしたのと同じように何度か瞬きをし、 「……クロア?!」  努めて小声で、彼の名を叫んだ。


 彼女はまず、危ないから早くこっちへと常套句を告げ、近寄ってきた彼に危ないじゃないと舌っ足らずに叱咤し、彼が謝罪してようやく、彼がここにいる理由を問うてきた。 「それは……」  説明しようとして、彼は口ごもった。  何かの夢を見て眠れなくなってトイレに起きてなんとなく星が見たくなった。  頭の中で理由を組み立てて、これは悪いこと――子供が夜遅くに出歩くこと――をしてもいい理由だろうかと考えた結果、そうではないと思ったからである。  彼の暴挙は、彼女と彼女の母親に見つからないことが前提にあった。それが崩された時点で、もう悪事以外の何物でもない。
 ――悪いことをした子は、捨てられてしまう。
 それは、路上で寝転がっている少年少女を指して、聞き分けのない子供を脅し気味に叱るときの常套句。  事情あって彼女の母親に引き取られ、居候として生活している彼は、実際に言われたことはない。けれど、ここで暮らしていればそんな会話を耳にする機会はそれなりにある。  決して頭の回転が悪くない彼は、その言葉の本当の意味を何となく理解していた。そして理解していたからこそ、悪いことはしてはならない、そう思っていた。  悪いことをすると、彼女の母親が自分を叱るために怒る。母親が怒っていて、良い気分のする娘がいるはずがない。  一緒に暮らそうと笑顔を向けてくれた少女が悲しそうな顔をすること。  彼はそれが何よりも悲しくて、嫌だった。ましてその理由が自分にあるなど、彼には耐え難いことだった。  彼女が笑っていれば、自分も笑える。笑うことは楽しい。彼女といると、とても楽しい。だから、彼女の笑顔が見たい。  今はまだ幼さゆえ、悲しい顔をさせる行為を慎む、というだけに収まってはいるが――結果として彼は、彼女が笑ってくれるなら何でもする、という信条を持つことになる。 「……ごめん、なさい」  彼は頭を下げた。  どう説明しても、仮に嘘をついたとしても、結局は悪事を働いた事実を覆せない。何せ彼女自身に現場を見られてしまったのだから。  ならば少しでも許しを請おうと、まずは謝った。 「言いたくないの?」 「ちがう!」  彼女の不機嫌そうな顔を見て、彼はぶるぶると首を振った。 「……ねむれなくて」  何となく、夢を見たせいで、という部分は端折ってしまった。  夢ぐらいで眠れないなんて情けない、そう思われるのが嫌だったのと、じゃあどんな夢だったのかと聞かれた時に答えられないからだった。  はっきりと説明できなければ、人は信じてはくれない。適当にでまかせを言って嘘をついているのだろうと疑われる。子供の言うことなど特に。  もちろん彼女も子供であるが、彼女は彼女の母親に通じている。彼女が母親へ告げるとき、悪い印象を持たせるとしか思えなかった。 「ごめんなさい」  顔を上げられない彼は、今度は腰を折って頭を下げた。 「クロア」  ひどく優しい声が、彼を呼んだ。そこに怒気は微塵も感じられない。  そろそろと彼が顔を上げると、何故か彼女は微笑んでいた。それに見とれる暇もなく、目の前に手のひらが差し出される。 「行こう」  彼女が誘っているのは、どうも家に戻るということではないらしい。そんな雰囲気を感じ取って、彼は聞いた。 「いくって、どこに」 「あそこ」  幼い指が示したのは、剥き出しの線路と降車場だけで構成された、ミント区駅だ。


 時間的に、軌道車が入ってくることのない降車場はひどく静かだった。時折、路上生活者が寝所として一時的に間借りしていることもあるが、今日は誰もいないようだ。  そんな場所に二人はやってきた。彼の手を握った少女が、戸惑う彼をぐいぐいと引っ張る形で。 「きれいだねっ」 「……うん」  降車場に腰を下ろし、空を見上げる少女が楽しそうに言う。  言葉の内容には同意できたものの、彼の反応は鈍かった。彼女の意図がさっぱりわからなかったからだ。  夜遅くに出歩いていた自分を、彼女は怒っていないのだろうか。最初はその疑問だけだったのだが、ふと、そういえば彼女こそ何故ここにいるのか、という当然の疑問に行き着いたのだ。  だが、それは聞いてもいいものなのか。自分だって聞かれて答えづらかったことを、彼女にしてもいいのだろうか。  彼の出した答えは否だった。  だからただ、彼女に手を引かれるまま、同意を求められるまま、彼はここに居た。  首を上向かせたままだった少女が、ゆっくりと首の位置を戻していき、そのまま下を向いた。彼も正面を向く所まではそれに倣い、後は見づらくなった彼女の横顔に視線を向ける。 「ねえ、クロア」  顔を上げずに口を開いた彼女は、まるで独り言のように呟いた。 「私も、ねむれなかったの」 「ルカも?」  深く頷き、そして彼女はまた顔を空へと向けた。 「ねむれないときはね、こうしてお星さまを見に来ることにしてるんだ」  つられて、彼も星を見る。一人で見上げたときと、何ら変わりのない星々。それが、どこか違った風に見えるのは気のせいだろうか。  実は、彼女が星を見る理由の一つに、「人はいつかお星様になる」という話を聞いたから、というものがあるのだが――もちろんこのときの彼には知る由もない。 「お布団にいてもねられそうにないから、きぶんてんかんをするの」  きぶんてんかん。意味がよくわからなかったが、彼はとりあえずその聞いたばかりの単語を心に刻んだ。  そうして、えへへ、と笑っていた彼女が、急に少しだけ表情を硬くした。 「これ、お母さんには、ないしょね」  ぴんと立てた人差し指が、彼女の唇をとんとんと叩く。強調されているのだと理解して、彼はこくこくと首を縦に振った。  すると、声を潜めていた少女はふわりと笑い、 「だから、クロアのことも、ないしょだよ」  彼の唇にそっと、人差し指を押し当てた。  小さな驚きと、安堵と――何か色々なものがないまぜになって、彼はうん、と答えようとして、口がゆるく押さえられていることに気付いた。  かといってさっきのように首肯すれば、その指を振り払うことになってしまう。 「……ん」  しばらく迷った末、彼は僅かに首を沈めて、閉じたままの口からもごもごとうめいた。


 来たときと同じように彼女に手を引かれ、先を行く背中を見ながら、彼は思った。 (ルカは、すごい)  自分の求めるものを、自分が言ってもいないのに、当たり前のようにくれる。それはいつでも、というわけではないけれど――いつだってそれは、彼の心を優しく包み込んで、安心させてくれるのだ。  ルカと自分は年齢が一つしか違わない。何よりルカは女の子だ。それなのに。 (ぼくは、ルカにまもってもらってる)  だから彼は、彼女を心底凄いと思い、そしてそれは、一つの決意へと繋がっていく。 (ぼくも、ルカをまもりたい)  男の子が女の子に護られている、という構図が格好良いものではない、ということもあった。  けれど何より、彼は彼女の笑顔を望んでいたのだ。 (まもってもらえると、むねがあつくなって、……うれしい)  だからもし、自分が彼女を護れるようになれば――彼女が自分に与えてくれた、たくさんの温かなものを、彼女にも渡せるのではないか。  それを考えるだけで、彼の胸は少しだけ早いリズムを刻み始めた。  自然と、再び手を繋ぐ直前の会話が思い出される。
 降車場に立った彼女は線路の先を見つめ――彼に背を向ける形で――こう言った。 「ねえクロア。この先に何があるか知ってる?」 「えっと、みくりの森」 「もっと先」 「ラクシャク。あ、それともエナ、かな」  彼女は小さく首を振って、前者が正解だと告げた。 「その上に、何がある?」 「……パスタリア?」  森と水の都。彼にとってそこは、話にしか聞いたことのない、夢物語のような街だった。 「そう、パスタリア」  彼女は復唱して、そのまま黙ってしまった。  しばらく待っても反応のない彼女に、彼は必死で考えた言葉を投げかけた。 「ルカは、パスタリアにいきたいの?」  僅かな間を置いて、 「うん」  彼女は静かに頷いた。 「……」  どうして? とは、彼は最後まで聞けずじまいだった。  何故かはわからなかったが――聞いてはいけないような、そんな雰囲気を感じて、口を開けなかったのだ。  そのときの彼女の背中が妙に小さく、どこか遠くにあるように見えたのは、果たして気のせいであったのか、それとも。
 記憶にあるその背中と、目の前にある背中を重ね合わせて、彼は心中で呟いた。 (ぼくは――ルカを、まもる)
 それは、彼の夢の小さな始まり。  いつかこの大陸全てを巻き込む大事件へ繋がる、ささやかで、けれど何よりも尊い、想いの一つだった。


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 どんだけ夢を見たら気が済むのか私は、という話。  へ……へへ、許可さえ下りりゃあ捏造なんてやったもん勝ちさね……(ギラリ)(最低だ)


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